中小動物(ニホンジカ・イノシシなど)

高校日本史的重要度
★★

【参考リンク】
イノシシ(Wikipedia)

中小動物(ニホンジカ・イノシシなど) (ちゅうしょうどうぶつ)

縄文時代:約1万6000年前〜前4世紀頃

【概説】
更新世から完新世への気候温暖化にともない、日本列島で増加したニホンジカやイノシシなどの動物。従来のナウマンゾウなどの大型動物に代わり、縄文時代における主要な狩猟対象となった。これらの中小動物の出現は、弓矢の発明や犬の飼育など、縄文人の生業技術や社会構造の変革に決定的な影響を与えた。

気候変動と植物相の変化が生んだ生態系

約1万年前に地球規模の温暖化が本格化し、地質年代が更新世氷河時代から完新世へと移行すると、日本列島の自然環境は劇的に変化した。氷期を象徴する針葉樹林は後退し、東日本ではブナやミズナラなどの落葉広葉樹林、西日本ではシイやカシなどの照葉樹林が拡大した。これにともない、それまでの主力な狩猟対象であったナウマンゾウオオツノジカといった大型哺乳類が絶滅、あるいは列島から姿を消した。代わって台頭したのが、どんぐりなどの堅果類を餌とするニホンジカイノシシをはじめとする、敏捷な動きを見せる中小動物であった。

狩猟技術の革新と「弓矢」の登場

中小動物の増加は、縄文人の生業(食料獲得技術)に重大なパラダイムシフトをもたらした。従来の大型動物を待ち伏せて仕留める大型の槍(尖頭器)に代わり、すばやく動き回る中小動物を遠距離から正確に射止めるための新しい道具が必要となった。ここで発明されたのが弓矢石鏃を先端に装着したもの)である。さらに、獲物を追い詰めたり回収したりするために野生のオオカミを家畜化した犬(縄文犬)の飼育が始まり、列島各所の遺跡からは人間とともに手厚く埋葬された犬の骨が出土している。また、地形や獣道を巧妙に利用した「陥し穴(おとしあな)」による罠猟も全国で展開された。

縄文人の精神世界と動物たち

ニホンジカやイノシシなどの動物は、単なる食糧(動物性タンパク質)源にとどまらず、皮や骨、角などが衣服や各種の道具(骨角器)としてフル活用された。このように彼らの生命に深く依存していた縄文人は、これらの中小動物に対して強い敬意と信仰の念を抱いていたと考えられている。それを象徴するのが、遺跡から出土する猪形土製品(イノシシを模した土製品)である。多産であるイノシシは豊穣や生命力の象徴とされ、祭祀や呪術の道具として用いられた。自然界のすべてに霊魂が宿るとするアニミズムの精神は、これら中小動物との日常的な関わりの中で深く醸成されていったのである。

最終更新:
2026年6月15日 @ 09:52

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