西郷隆盛

薩摩藩の下級武士から台頭し、勝海舟と江戸城無血開城の交渉を行ったのち、明治政府と対立して西南戦争で敗死した人物は誰か?
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重要度
★★★★

西郷隆盛

1828〜1877

【概説】
幕末から明治初期にかけて活躍した薩摩藩出身の武士、政治家。島津斉彬に見出されて幕政改革に奔走し、のちに大久保利通らとともに薩長同盟を結んで倒幕を主導した維新の三傑の一人。維新後は新政府の首脳として廃藩置県を断行するが、征韓論をめぐり対立して下野し、最後は不平士族を率いて西南戦争を起こし自刃した。

下級藩士から島津斉彬の腹心へ

薩摩藩(現在の鹿児島県)の城下において下級藩士の長男として生まれた。藩校の造士館に学び、大久保利通らとともに若手改革派のグループを形成した。農政の実務役人を務めていた折、その建白書がのちに藩主となる開明派の島津斉彬の目にとまり、抜擢を受けることとなった。斉彬の側近として江戸へ赴いた西郷は、将軍継嗣問題(一橋派の擁立)や安政の改革に奔走し、水戸藩の藤田東湖や越前藩の橋本左内ら全国の有志と広く交流した。この時期に培われた広い視野と諸藩の有力者たちとの人脈は、のちの倒幕運動における彼の強力な政治的基盤となったのである。

二度の流罪と薩長同盟の締結

1858年、斉彬が急死し、大老・井伊直弼による安政の大獄が始まると、西郷は後ろ盾を失い、京都の僧・月照とともに錦江湾に入水自殺を図るが奇跡的に一命を取り留めた。その後、幕府の目を逃れるために奄美大島などに流罪となる。島津久光が藩の実権を握ると一時復帰するものの、上京の動きをめぐって久光と激しく衝突し、再び沖永良部島へ流された。こうした過酷な経験が彼の思想や精神を深く鍛え上げたといわれている。

1864年に赦免されて復帰した後は、禁門の変や第一次長州征討において幕府側として長州藩を破る中心的な役割を果たした。しかし、幕府の独裁的な権力強化に危機感を抱き、次第に幕府を見限るようになる。そして1866年、土佐藩の坂本龍馬や中岡慎太郎の仲介を受け、長州藩の木戸孝允らと薩長同盟(薩長連合)を極秘裏に締結した。かつての敵同士が手を結んだことは、歴史の転換点であり、ここから時代は一気に武力討幕へと向かうこととなった。

王政復古と江戸無血開城

1867年、徳川慶喜が政権を朝廷に返上する大政奉還を行ったのち、西郷らは朝廷工作を主導して王政復古の大号令を発令させ、旧幕府勢力の排除を図った。旧幕府側を挑発して鳥羽・伏見の戦いを引き起こし、戊辰戦争が勃発すると、西郷は新政府軍の実質的な司令官(大総督府下参謀)として東征軍を指揮した。

江戸総攻撃を目前に控えた1868年4月(旧暦3月)、西郷は旧幕府側の代表である勝海舟と会見に臨んだ。この交渉によって江戸城の無血開城が実現し、総攻撃は回避された。人口密集地であった江戸を戦火から救っただけでなく、諸外国の介入を防ぎ、新政府の正当性と全国支配を決定づける歴史的な偉業であった。

新政府での対立と明治六年政変

明治維新後、西郷は一時鹿児島へ帰郷するが、新政府の基盤強化を急ぐ大久保利通らの強い要請を受けて再び上京し、参議に就任した。1871年には、西郷が薩摩・長州・土佐から集めた御親兵(天皇の直属軍)の圧倒的な武力を背景として、廃藩置県という中央集権化のための大改革を断行した。

その後、岩倉使節団が欧米視察に赴いている間、留守政府を預かる西郷らは、鎖国政策をとる朝鮮に対し、武力行使も辞さずに開国と国交を迫る征韓論を主張した。しかし、1873年に帰国した大久保利通や岩倉具視ら「内治優先派」と激しく対立する。結果として西郷の朝鮮派遣は中止され、敗れた西郷は参議を辞職して下野した(明治六年政変)。これに同調して板垣退助や江藤新平らも政府を去り、新政府は大きく分裂することになった。

西南戦争と悲劇の結末

鹿児島に帰郷した西郷は私学校を設立し、若者の教育と農耕に日々を費やした。しかし、廃刀令や秩禄処分など新政府の近代化政策によって特権を奪われた全国の士族たちの不満は頂点に達し、各地で反乱が相次いだ。1877年、私学校の生徒たちの暴発に押される形で、西郷はついに挙兵し、西南戦争を引き起こした。

西郷軍は熊本城を包囲するも攻略できず、徴兵制による近代的な兵器と豊富な物資を持つ政府軍の前に次第に追い詰められた。同年9月、鹿児島の城山で包囲された西郷は自刃し、ここに士族による最後の、そして最大の武力反乱は終結した。西郷隆盛は、明治維新という未曾有の変革を推進した最大の功労者でありながら、時代の波に取り残された旧士族の不満を一身に背負い、反逆者として散った。この劇的な生涯ゆえに、彼は「維新の三傑」としてだけでなく、悲劇の英雄として後世の日本人に深く愛され続けているのである。

西郷隆盛: 西南戦争への道 (岩波新書 新赤版 231)

激動の明治維新を突き進んだ英雄の最期と、その裏に隠された西南戦争へ至る必然的な歴史背景を読み解く一冊。

西郷隆盛 上 (中公新書 223 維新前夜の群像 6)

幕末の混沌の中で権力の中枢に身を置きながら、独自の理想を追求し続けた人間・西郷の真実に迫る重厚な伝記。

最終更新:2026年6月17日 @ 23:49

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