除目 (じもく)
【概説】
古代から中世の日本において、朝廷が大臣以外の諸官吏を任命するために執り行った公式の儀式。古い官職を除き去り、新しい官職を台帳に書き載せる(目する)ことに由来し、特に平安時代の貴族社会において重要な政治的・経済的イベントであった。
「県召」と「司召」:二つの主要な除目
除目は、実施される時期と任命対象となる官職の違いによって、主に二つに大別される。毎年正月に行われ、地方官である国司などを任命する県召の除目(あがためしのじもく)(春の除目)と、毎年秋に行われ、中央の官職(京官)や衛府の官人を任命する司召の除目(つかさめしのじもく)(秋の除目)である。これらは天皇が出御し、摂政・関白や太政官の公卿たちが数日間にわたり徹夜で審議を重ねる「定め」を経て決定される、国家の最重要儀式の一つであった。
受領の利権化と激化する猟官運動
平安中期以降、地方統治の変質に伴って国司(受領)が莫大な富を蓄積できるようになると、除目は貴族たちにとって一族の繁栄を左右する利権獲得の場へと変貌した。少しでも豊かな国(上国・大国)の受領ポストを得るため、私財を投じて内裏の修復や寺社造営を請け負うことで官職を得る成功(じょうごう)や、功績を理由に再任を求める重任(ちょうにん)といった猟官運動が公然と行われた。清少納言の『枕草子』には、除目の夜に吉報を待ちわびる人々や、落選して落胆する人々の様子が生々しく描かれており、当時の貴族社会における除目の存在感の大きさを物語っている。