猪苗代水力電気会社 (いなわしろすいりょくでんきがいしゃ)
1911〜1923
【概説】
1911年に設立され、福島県から東京への長距離高圧送電を成功させた電力会社。日露戦争後の産業発展を背景に、本格的な水力発電事業の先駆けとなった。この成功は、日本の主要動力源が石炭から電力へと移行する契機となった。
猪苗代第一発電所の建設と長距離高圧送電
明治末期から大正初期にかけての日本は、産業革命の進展に伴い電力需要が急増していた。こうした中、猪苗代水力電気会社は福島県の猪苗代湖から流出する日橋川の水力を利用した大規模な発電を計画し、1914(大正3)年に猪苗代第一発電所を竣工させた。
同社はここから、約225キロメートル離れた東京の田端変電所まで、当時としては世界3位、東洋一の規模となる11万5000ボルトの超高圧送電線による送電を開始した。この長距離高圧送電の成功は、大消費地である都市や工業地帯から離れた山間部であっても、豊かな水力を利用して発電・送電が可能であることを実証した。
「水主火従」の確立と動力革命の進展
当時の日本における発電の主流は、都市近郊に設置された石炭による火力発電であったが、本送電路の完成は、日本のエネルギー政策を水力発電主体の「水主火従」へと転換させる決定的な契機となった。
安価で安定した電力の供給は、京浜工業地帯をはじめとする東京近郊の工場電化を急速に推し進め、日本の動力革命に大きく貢献した。その後、同社は第一次世界大戦後の大不況期における電力業界の再編の中で、1923(大正12)年に大手電力会社である東京電燈へと合併された。