或る女

有島武郎が執筆し、自我に目覚めて因習に反逆し、自由を求めて破滅していくヒロイン・早月葉子の姿を描いた長編小説は何か?
カテゴリ:
重要度
★★

【参考リンク】
或る女(Wikipedia)

或る女 (あるおんな)

1919年

【概説】
大正期を代表する作家・有島武郎による長編小説。近代日本における家制度や従来の封建的道徳に反逆し、自らの本能と情熱に従って生きて破滅していく女性・早月葉子の生涯を描いた近代文学の傑作である。

白樺派の思想と自我の超克

大正デモクラシーの潮流のなか、文学界では個人の尊厳や人道主義を掲げる白樺派が台頭した。有島武郎はその中心作家の一人であり、学習院出身の特権階級に属しながらも、自己の特権性への苦悩や社会正義への関心を深く持っていた。『或る女』は、前身となる「或る女の広葉」が1911(明治44)年から『白樺』に連載され、1919(大正8)年に後半部が書き下ろされて完結した。本作は、キリスト教的道徳や「家」の論理、男権社会の欺瞞に対して、美貌と強い意志を武器に孤独な闘いを挑むヒロインを描くことで、従来の日本文学にない強烈な個性を提示した。

「新しき女」の時代背景と同時代性

本作の主人公・早月葉子のモデルとなったのは、国木田独歩の最初の妻であり、有島の親戚でもあった実在の女性・佐々城信子である。作品が書かれた1910年代は、平塚らいてうらによる『青鞜』の創刊(1911年)に代表されるように、女性の自我の目覚めと解放を求める「新しき女」が社会問題化していた時代であった。葉子の奔放で自立的な生き方は、社会からは「悪女」「淫婦」として指弾される性質のものであったが、有島は彼女を単なる不道徳者としてではなく、近代の過渡期において自己の生命力を極限まで燃焼させようとした先駆的な女性像として活写した。本作は、個人の自由を抑圧する近代日本の社会構造を鋭く批判する社会的意義を有している。

或る女 1(前編)

近代日本の自意識と葛藤を、強烈な自我で生き抜こうとする女性の姿を通して鮮烈に描き出した文学の金字塔。

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最終更新:2026年6月17日 @ 23:49

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