ミル
1806〜1873
功利主義の発展と『自由論』
ジョン・スチュアート・ミル(J.S.ミル)は、ジェレミ・ベンサムの功利主義を継承しつつ、精神的快楽を重視する質的功利主義を提唱した。彼の代表作である『自由論』(1859年)は、国家権力や多数派の意見による個人の抑圧を警戒し、他者に危害を加えない限りにおいて個人の自由は最大限に保障されるべきであるという「他者危害の原則」を説き、近代民主主義における自由の概念を確立した。
『自由之理』の刊行と自由民権運動への影響
明治維新期の日本において、ミルの思想は元幕臣の啓蒙思想家である中村正直によって紹介された。中村が『自由論』を邦訳した『自由之理』(1872年)は、当時の知識層や青年たちに熱狂的に受け入れられ、ベストセラーとなった。この『自由之理』に盛られた個人の尊厳や自由の思想は、藩閥政府による専制を批判し、国民の権利や国会開設を求めた自由民権運動の強力な理論的支柱となり、日本における近代的な人権意識の普及に貢献した。