日本列島改造論

田中角栄が首相就任前に著書で提唱した、新幹線や高速道路などの交通網で全国を結び、都市と地方の格差を解消しようとした政策構想は何か?
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日本列島改造論

1972年

【概説】
田中角栄が提唱した、高速道路や新幹線で全国を結んで地方の工業化を進め、都市と地方の格差をなくすという総合的な国土開発構想。1972(昭和47)年に同名の著書が刊行されて空前のベストセラーとなり、直後に誕生した田中内閣の政策的支柱となった。

高度経済成長のひずみと構想の誕生

1960年代、日本は池田勇人内閣の「国民所得倍増計画」に代表される高度経済成長を謳歌していたが、1970年代に入るとその負の側面が顕著に表れ始めた。太平洋ベルト地帯などの都市部へ人口や産業が過度に集中することで生じた「過密問題」(深刻な交通渋滞、住宅難、公害の激化)と、それに伴う地方の急激な人口流出・産業衰退という「過疎問題」である。

このような状況下の1972(昭和47)年6月、第3次佐藤栄作内閣の通商産業大臣であった田中角栄は、自らの政策ビジョンをまとめた著書『日本列島改造論』を出版した。この構想は、都市と地方の格差を是正し、「過密・過疎」の同時解消を目指す壮大な国家ビジョンとして提示され、同年7月の自由民主党総裁選を勝ち抜き、首相の座に就くための強力なマニフェストとして機能した。

国土の均衡ある発展を目指した具体策

日本列島改造論の核心は、交通・通信ネットワークの抜本的な整備による地方の工業化であった。具体的には、全国を網羅する新幹線ネットワーク(全国新幹線鉄道網)と高速道路網(全国高速自動車国道)を建設し、人とモノの移動時間を劇的に短縮することを目指した。

これにより、大都市周辺に集中していた工場や企業を地方へと分散させ、地方に25万都市規模の新たな中核都市を多数建設することが構想された。都市部の過密を解消すると同時に、地方の雇用と所得を増大させることで、日本全国どこに住んでも豊かな生活を送ることができる「国土の均衡ある発展」を実現しようとしたのである。

列島改造ブームとインフレーションの狂乱

1972年7月に第1次田中角栄内閣が発足すると、日本列島改造論は直ちに政府の基本方針として実行に移された。大規模な公共事業が矢継ぎ早に打ち出され、国民の期待は大きく膨らんだ。

しかし、この壮大な構想は予期せぬ副作用をもたらした。開発を見越した大手商社や不動産会社、さらには一般投資家までもが、地方の山林や農地を競うように買い占めたことで、全国的な地価の異常高騰(列島改造ブーム)が引き起こされたのである。さらに、当時の日銀による金融緩和政策も相まって市場に過剰流動性が発生し、激しいインフレーションが進行し始めた。

オイルショックによる挫折と後世への影響

列島改造ブームによる物価高騰が社会問題化する中、1973(昭和48)年10月に第4次中東戦争を契機とする第1次石油危機(オイルショック)が発生した。これにより日本の物価は「狂乱物価」と呼ばれる異常事態に陥り、トイレットペーパー騒動などに象徴される国民的パニックを招いた。政府はインフレ抑制のために総需要抑制策への転換を余儀なくされ、列島改造に関する大規模プロジェクトは次々と凍結・延期に追い込まれた。結果として、日本列島改造論は事実上の挫折を喫した。

しかし、構想そのものが完全に消滅したわけではなかった。その後数十年にわたり、日本列島改造論で描かれた新幹線や高速道路の整備計画は、歴代政権による公共事業の青写真として機能し続けた。これにより地方の交通インフラは劇的に向上した一方で、地方経済の過度な公共事業依存体質や、莫大な財政赤字の累積、自然環境の破壊といった「土建国家」的な負の遺産も後世に残すこととなった。日本列島改造論は、現代日本の国土形成と経済構造を形作った極めて重要な歴史的転換点として位置づけられている。

復刻版 日本列島改造論

高度経済成長の先を見据え、国土の均衡ある発展と未来のインフラ整備という壮大な構想を描き出した国家経営の指針。

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最終更新:2026年6月17日 @ 23:49

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