玉泉寺 (ぎょくせんじ)
1856年に米国総領事館を設置
【概説】
静岡県下田市にある曹洞宗の寺院。幕末の1856年、日米和親条約に基づき来日した初代アメリカ総領事タウンゼント・ハリスによって、日本最初の米国総領事館が置かれた場所。ここを拠点として、のちの日米修好通商条約締結に向けた本格的な外交交渉が展開された。
開国期のハリス着任と玉泉寺の提供
1854年(安政元)に締結された日米和親条約により、下田は箱館とともに開港地(薪水給与地)となった。同条約の規定に基づき、1856年(安政3年)にアメリカ合衆国初代総領事としてタウンゼント・ハリスが下田に到着した。しかし、外国人の国内居住を警戒する江戸幕府はハリスの江戸入りを拒み、代わりに下田港に近く、それ以前からロシア使節プチャーチンらの休息所として利用されていた玉泉寺を総領事館として提供した。これにより、玉泉寺の境内に星条旗が掲げられ、日本における最初の外国公館としての機能を果たすこととなった。
日米修好通商条約への布石と歴史的意義
ハリスは玉泉寺に約2年11ヶ月にわたって滞在し、通訳のヒュースケンらとともに、下田奉行を相手に貿易の開始を求める交渉を重ねた。この玉泉寺での粘り強い外交交渉が、のちのハリスの江戸出府や将軍徳川家定への謁見、そして1858年(安政5)の日米修好通商条約の締結へとつながった。また、ハリスの滞在中、玉泉寺では日本で初めて牛乳が販売されたり、家畜の屠殺が行われたりするなど、日本の近代化や食文化の西洋化を示す先駆的なエピソードも残されている。現在も境内には、開国期に下田で没したアメリカ兵やロシア兵の墓所があり、激動の幕末外交を象徴する国指定史跡となっている。