サヌカイト

重要度
★★

サヌカイト

【概説】
叩くと高く澄んだ金属音がする、極めて緻密なガラス質の安山岩の一種。香川県の五色台や大阪・奈良国境の二上山などを主要な原産地とし、旧石器時代から縄文時代にかけて石器の原材料として広範囲で利用された。

優れた石質と地質学的背景

サヌカイトは地質学的には古銅輝石安山岩(こどうきせきあんざんがん)と呼ばれる岩石であり、約1400万年前の新生代新第三紀における激しい瀬戸内火山活動によって形成された。非常に緻密で硬く、ガラス質の組織を豊富に含むため、打撃を加えると極めて鋭利な割れ口(貝殻状断口)が生じるという特徴を持つ。この鋭い刃物のような割れ味は、獣の皮を剥ぎ肉を切り分けるナイフ(ナイフ形石器)や、槍の先端に取り付ける尖頭器などを製作するのに最適であった。また、叩くと「カンカン」と金属的な美しい音が響くことから、古くから「カンカン石」とも呼ばれて親しまれている。1891年(明治24年)、ドイツの地質学者ワインシェンクが讃岐(香川県)産のこの岩石を研究し、現地名にちなんで「サヌカイト」と命名したことで世界的に知られるようになった。

旧石器時代における広域流通と社会活動

サヌカイトは、日本列島の旧石器時代において、東日本を代表する黒曜石(こくようせき)や頁岩(けつがん)と並び、石器製作における最も重要かつ代表的な石材であった。サヌカイトの原産地は香川県の五色台(ごしきだい)や坂出市の金山(かなやま)、そして大阪府と奈良県の境に位置する二上山(にじょうざん)周辺など、極めて限定されている。しかし、これらの原産地から採取されたサヌカイトは、原産地周辺に留まらず、瀬戸内海を越えて中国・四国地方の広範な地域、さらには近畿、東海、中部地方の一部にまで運ばれ、遺跡から出土している。旧石器時代の人々は定住せず、遊動生活を送っていたが、良質な石材の確保は生存に関わる死活問題であった。サヌカイトの広域な分布状況は、当時の人々が石材を求めて極めて広大な範囲を移動していたこと、あるいは異なる集団間で石材を融通し合う「物々交換(交易)」のネットワークが、すでに旧石器時代の段階で初期的な形で成立していた可能性を強く物語っている。

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