点と線

高校日本史的重要度
★

【参考リンク】

点と線

1958年

【概説】
作家・松本清張による昭和中期の長編推理小説。国鉄の時刻表を用いた精緻なアリバイ崩しを軸に、官僚社会の腐敗という現代的なテーマを描き、社会派推理小説ブームの火付け役となった不朽の名作である。

社会派推理小説の誕生と時代背景

『点と線』は、1957(昭和32)年から1958(昭和33)年にかけて雑誌『旅』に連載され、1958年に弘済出版社から単行本として刊行された松本清張の代表作である。本作は、それまでの日本の探偵小説に主流であった、おどろおどろしい洋館や奇抜なトリックを重視する「本格ミステリ」に対し、現実の社会問題や人間関係、犯罪の動機を重視する社会派推理小説という新たなジャンルを不動のものとした。作中では中央官庁の汚職事件が背景に据えられており、政官界の癒着という当時の世相を鋭く告発する内容が、戦後復興から次の段階へと歩みを進める当時の読者に強いリアリティをもって受け入れられた。

交通網の発達と「時刻表トリック」の歴史的意味

本作の最大の特色は、福岡県の香椎海岸で発見された男女の心中遺体をめぐり、東京駅でのわずか「4分間の空白」を突いた、国鉄の「時刻表」を用いたアリバイ工作にある。この精緻なトリックは、高度経済成長期へと突入し、日本全国を網羅する鉄道網が急速に整備され、時間が分単位で正確に管理される社会へと変貌を遂げていく戦後日本の近代化プロセスを象徴している。文学史のみならず、昭和30年代の社会インフラの発展や人々の生活様式、時間意識の変容を裏付ける文化史的な史料としても、本作はきわめて高い価値を有している。

最終更新:
2026年6月16日 @ 07:47

日本史一問一答(ランダム)

Q. 夢窓疎石の高弟で、相国寺の住職を務め、室町幕府の初代僧録(僧録司)に任命された禅僧は誰か?
Q. 綱吉の時代に定められた、親族が死んだ際に喪に服す期間や、けがれを忌む期間の基準を何と呼ぶか。
Q. 浄土真宗の寺院や道場を中心に、周囲に堀や土塁を築いて外敵を防ぎ、門徒(信者)たちによって自治が行われた都市を何というか?