周防国 (すおうのくに)
7世紀末〜1871年
【概説】
山陽道に属する令制国の一つで、現在の山口県東部に該当する地域。奈良時代においては、聖武天皇が推進した東大寺大仏殿などの造営事業を支えるため、主要な木材(材木)の供給地として国家的に極めて重要な役割を果たした。
東大寺造営を支えた「周防の杣」と木材供給
奈良時代中期、聖武天皇による国分寺建立の詔や大仏造立の詔に基づき、国家の総力を挙げた一大事業として東大寺の造営が進められた。この未曾有の巨大木造建築群を建設するためには、全国から膨大な良質の木材を調達する必要があった。そこで造営資材の供給地(杣と呼ばれる御料林)として指定されたのが周防国であった。特に現在の山口市徳地地域に比定される佐波川流域などの山林からは、大仏殿の梁や柱となるべき巨木が数多く伐り出され、造営事業の完遂に貢献した。
水上交通の利便性と国家的物流網
周防国が主要な木材供給地として選定された最大の要因は、瀬戸内海に面したその地理的条件にある。伐採された巨木は、領内の河川を利用して平野部へと流され、そこから瀬戸内海の海上ルートを通じて、畿内の難波津や平城京近郊へと運ばれた。この水上交通のネットワークが確立されていたからこそ、重量物である巨木の遠距離輸送が可能となった。同時代には、隣接する長門国から大仏鋳造に必要な銅が産出されており、周防国を含む周防灘・瀬戸内海沿岸地域は、律令国家の仏教政策および巨大建造物プロジェクトを物資調達の面から根底で支える一大物流拠点であったと言える。