青函トンネル (せいかんとんねる)
【概説】
青森県(本州)と北海道を結ぶ津軽海峡の海底下を貫く、全長53.85kmの世界最長クラスの交通用海底トンネル。昭和時代中頃から本格的な建設が進められ、1988(昭和63)年に開通した。日本の国土軸を一体化させ、物流・交通の安定化に決定的な役割を果たした国家プロジェクトである。
建設の契機と「洞爺丸事故」
明治以来、本州と北海道の間の津軽海峡は、主に日本国有鉄道(国鉄)が運航する青函連絡船によって結ばれてきた。しかし、海上交通は気象の影響を受けやすく、冬季の暴風雪などによる運休がしばしば発生していた。さらに1954(昭和29)年9月、台風15号の直撃によって連絡船「洞爺丸」などが沈没し、死者・行方不明者1,430人を出す大惨事(洞爺丸事故)が発生した。この未曾有の海難事故を契機として、天候に左右されない安全な交通網の確保が急務とされ、海底トンネルの本格的な調査・建設への機運が一気に高まることとなった。
世紀の大工事と技術的克服
1964(昭和39)年に本格的な調査坑の掘削が開始され、1971(昭和46)年には本工事が起工された。海底下の掘削は、極めて脆弱な地質や高圧の湧水(海水)との戦いであり、度重なる異常出水事故に見舞われるなど工事は困難を極めた。この難局に対し、先進的な注入技術や掘削技術が開発・導入され、日本の土木技術を世界最高水準へと押し上げる契機となった。24年におよぶ歳月と、当時の国鉄の巨額の財政負担、そして34名もの殉職者の犠牲を経て、1988(昭和63)年3月13日にようやく津軽海峡線として開業を迎えた。
「一本列島」の実現と現代的意義
青函トンネルが開通した1988年は、同年4月に本州と四国を結ぶ瀬戸大橋も開通した年であった。これにより、北海道・本州・四国・九州の日本主要四島がすべて陸路(レール)で結ばれる、いわゆる「一本列島」が完成した。これにより、気象災害に影響されない安定的な大量物資輸送(特に農産物や貨物輸送)が可能となり、国内物流の効率化と地域間格差の是正に大きく貢献した。さらに、2016(平成28)年には北海道新幹線の新青森・新函館北斗間が開業し、新幹線と在来線貨物列車が同一のトンネルを共用するシステムが確立され、現在も北の物流・観光の大動脈として機能し続けている。