東京オリンピック(2021年)
【概説】
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大(パンデミック)の影響を受け、近代オリンピック史上初となる「1年延期」を経て、2021年夏に開催された第32回夏季オリンピック競技大会。東京都を中心とする首都圏を中心に、大半の会場において無観客という極めて異例の形式で実施された国際スポーツ大会である。
コロナ禍による「1年延期」と招致理念の変容
当初、2020年夏の開催を予定していた東京オリンピック・パラリンピックは、2011年の東日本大震災からの復興を世界にアピールする「復興五輪」を最大のテーマに掲げて招致された。しかし、2020年初頭から世界的に猛威を振るった新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、世界各国で都市封鎖(ロックダウン)が行われる未曾有の事態となった。これを受けて国際オリンピック委員会(IOC)と日本政府、東京都などは、2020年3月に大会の「1年延期」を決定した。戦争による中止を除き、感染症による延期はオリンピック史上初めてのことであった。
1年の延期を経た2021年も感染の収束は見通せず、開催の是非をめぐっては世論や医療界から強い批判や懸念が示された。結果として、大会は従来の「復興」という文脈以上に、人類がパンデミックに打ち勝った証、あるいは困難な状況下での国際的連帯を示す場としての意義を急遽付与される形で強行されることとなった。
「無観客開催」と「バブル方式」がもたらした歴史的影響
感染拡大を防止するため、大会は東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県などの首都圏会場や北海道、福島県などの会場を含め、全セッションの約97%にあたる大半の会場で無観客という厳格な措置が取られた。これにより、大会史上最大規模のスタジアム群は静まり返り、テレビ放映を主軸としたメディアイベントとしての側面が際立つこととなった。
選手や関係者は外部との接触を遮断する「バブル方式」と呼ばれる厳格な行動制限のもとで管理され、毎日の検査義務などが課された。日本は自国開催の利点を活かして史上最多の金メダル(27個)を獲得するなどの競技的成功を収めたが、一方でインバウンド(訪日外国人観光客)による経済波及効果はほぼ消失し、巨額の大会経費の負担や、大会後の関連施設(レガシー)の維持費問題、さらに大会運営をめぐる汚職事件の露呈など、開催後の日本社会に多大な課題を残す結果となった。