ロシアのウクライナ侵攻 (ろしあのうくらいなしんこう)
【概説】
2022年2月にロシア連邦が隣国ウクライナに対して開始した全面的な軍事侵攻。第二次世界大戦後の国際法秩序を根底から揺るがす暴挙であり、世界的な経済的混乱や日本の安全保障政策に極めて大きな影響を与えた歴史的事件。
侵攻の背景と国際社会の多極化
2022年2月24日、ロシアのプーチン大統領はウクライナへの「特別軍事作戦」を名目に、同国への軍事侵攻を断行した。ロシア側はウクライナのNATO(北大西洋条約機構)加盟阻止や東部地域の保護を大義名分に掲げたが、これは国連憲章第2条が定める主権尊重や武力行使禁止の原則に反する明白な国際法違反であった。この事態に対し、アメリカやEUなどの西側諸国は迅速に団結し、ロシアに対する大規模な経済制裁を実施するとともに、ウクライナへの大規模な軍事・人道支援を継続した。しかし、グローバル・サウスと呼ばれる新興・途上国の中には制裁に加わらない国も多く、冷戦後の協調体制の崩壊と、国際秩序の多極化・分断がより鮮明となった。
日本への波及と安全保障・防衛政策の歴史的転換
令和時代の日本にとっても、この侵攻は「力による一方的な現状変更の試み」として極めて深刻に捉えられた。当時の岸田文雄内閣は、東アジア(特に台湾海峡)における同様の事態を抑止する観点から、G7(主要7カ国)と足並みをそろえて厳しい対露制裁を科し、自衛隊の防衛装備品の提供やウクライナ避難民の受け入れなどの異例の措置に踏み切った。経済面では、エネルギーや穀物の国際価格が高騰したことで、日本国内でも急速な物価高が発生し国民生活に打撃を与えた。さらに、北方領土問題を巡る日露平和条約交渉が中断に追い込まれたほか、周辺国からの脅威を背景に、2022年末には国家安全保障戦略など「防衛3文書」が改定され、反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有や防衛費の増額が決定されるなど、戦後の日本の防衛政策を根本から転換させる大きな契機となった。