世界最終戦論 (せかいさいしゅうせんろん)
1940年刊行
【概説】
陸軍軍人の石原莞爾が提唱した、東洋の代表たる日本と西洋の代表たるアメリカとの間で人類の運命を決する超短期の「最終戦争」が起こるとする軍事・思想理論。近代日本におけるアジア進出や、満州事変を主導した関東軍の行動を正当化する理論的支柱となった。
日蓮宗の信仰と独自の軍事学の融合
『世界最終戦論』は、満州事変の首謀者として知られる陸軍軍人・石原莞爾が1940年(昭和15年)に刊行した著作、およびそこに示された思想である。石原は、田中智学が率いる日蓮宗系の宗教団体「国柱会」に深く帰依しており、日蓮の予言とヨーロッパの近代軍事史研究(フリードリヒ大王やナポレオンなどの戦史分析)を融合させ、独自の歴史観を構築した。彼は、人類の戦争史は「決戦戦争」と「持続戦争」を交互に繰り返しながら発達しており、軍事技術(特に航空機や将来出現するであろう破壊的決戦兵器)の極限的な発達により、最終的には一撃で勝負が決する超短期の「世界最終戦争」が到来し、その後には世界に永久平和が訪れると予測した。
満州事変への影響と「東亜連盟」構想
この思想は、単なる未来予測にとどまらず、1931年(昭和6年)に勃発した満州事変の有力な理論的根拠となった。石原の構想では、西洋の盟主であるアメリカとの最終戦争を戦い抜くためには、日本単独の国力では不十分であり、隣接する満州(中国東北部)の資源を確保して「王道楽土」を建設し、日満支(日本・満州・中国)が強固に連携する東亜連盟を結成して自給自足の広域経済圏を確立することが急務であった。しかし、石原の意図に反して日本軍部は中国本土への戦線を拡大(日中戦争の泥沼化)させ、準備不足のままアメリカとの太平洋戦争へ突入することになり、石原自身は軍の主流から排斥される結果となった。