山本実彦 (やまもとさねひこ)
1885年〜1952年
【概説】
大正から昭和期にかけて活躍した日本の出版人、実業家。総合雑誌『改造』を創刊して大正デモクラシー期の論壇をリードし、1冊1円の「円本」ブームを仕掛けて出版文化の大衆化に決定的な役割を果たした人物である。
総合雑誌『改造』の創刊と論壇への影響
大正デモクラシーの思潮が日本社会に広がりつつあった1919(大正8)年、山本実彦は出版社である「改造社」を創立し、総合雑誌『改造』を創刊した。同誌は先行する『中央公論』と並ぶ大正期の代表的な論壇誌となり、労働問題や社会主義思想、先鋭的な文学作品を精力的に掲載して知識人や青年層から圧倒的な支持を集めた。さらに、山本は海外の著名な文化人の招聘にも尽力し、1922(大正11)年には物理学者アルベルト・アインシュタインを日本に招くなど、日本の学術・文化の発展に大きく貢献した。
「円本」ブームの創出と出版の大衆化
山本が日本出版史に残した最大の業績は、大正末期から昭和初期にかけて展開した「円本(えんぽん)」の仕掛けである。1926(大正15)年、改造社は1冊1円という当時としては破格の低価格で『現代日本文学全集』の刊行を開始し、事前予約金を集める会員制システムを導入して空前のベストセラーを記録した。この成功は他社の追随を呼び、日本における出版物の大量生産・大量消費時代、すなわち「出版の大衆化」を決定づける契機となった。