夢二式美人 (ゆめじしきびじん)
1910〜1920年代頃
【概説】
画家・竹久夢二が描いた、大きな瞳に長いまつ毛、細い手足を持ち、哀愁とけだるさを帯びた独特の叙情的な女性像。大正ロマンを象徴する文化的アイコンであり、当時の若い女性たちのライフスタイルやファッションに多大な影響を与えた。
大正ロマンの体現と「夢二式」の特徴
竹久夢二(1884〜1934)が描いた美人画は、従来の伝統的な美人画や浮世絵とは一線を画していた。その最大の特徴は、S字を描くようなしなやかで頼りなげなポーズ、細長く繊細な手足、そして憂いを帯びた大きな瞳と長いまつ毛である。この愁いを帯びたけだるい雰囲気は「夢二式美人」と呼ばれ、大正期特有の個人的な情熱やセンチメンタリズム(感傷主義)を反映したものとして、当時の知識人や若者から熱狂的に支持された。
消費社会の到来とモダンガールの先駆
夢二式美人が社会に浸透した背景には、大正期における大衆消費社会の成立とメディアの発達がある。夢二は純粋美術の枠にとどまらず、雑誌の表紙絵や挿絵、絵はがき、浴衣、日傘といった日用品のデザインを手がけ、自身のショップ「港屋絵草紙店」を開いてそれらを販売した。夢二が描く現代的で知的な女性像は、流行に敏感な女学生たちの憧れの的となり、彼女たちの服装や髪型、さらには「物思いに耽るポーズ」などの立ち居振る舞いにまで模倣された。これは、昭和初期に登場する「モダンガール」の先駆的な動きであり、日本における女性の主体的な美意識の芽生えを示すものでもあった。