縄文時代

重要度
★★★

縄文時代

約前11000年 – 前4世紀頃

【概説】
約1万3000年前から前4世紀頃まで続いた、土器や弓矢の使用、竪穴住居での定住を特徴とする日本の時代区分。地球規模の温暖化による自然環境の変化を背景に、狩猟・採集・漁労を基盤としながらも高度な定住社会を築き上げ、1万年近くにわたり独自の文化を育んだ。

自然環境の変化と縄文時代の幕開け

更新世(氷河期)が終わりを告げ、完新世へと移行する約1万数千年前、地球規模の温暖化が進行した。これにより海面が上昇して日本列島が大陸から切り離され、現在の列島の原型が形成された。気候の温暖化は植生にも大きな変化をもたらし、東日本ではブナやナラなどの落葉広葉樹林が、西日本ではシイやカシなどの照葉樹林が繁茂するようになった。

また、温暖化によってナウマンゾウなどの大型獣が絶滅し、代わって動きの素早いニホンジカやイノシシなどの野生動物が増加した。これらの中・小型獣を効率よく捕獲するために弓矢が発明されたことは、縄文時代の始まりを告げる重要な画期であった。さらに、海面の浸入(縄文海進)によって形成された入り組んだ海岸線は、豊かな漁場を提供することとなった。

定住社会の成立と生活基盤

豊かな自然環境の恩恵を受け、旧石器時代の移動生活から、一定の場所に長期間とどまる定住生活への移行が進んだ。人々は台地などの水はけが良く、川や海に近い場所に竪穴住居を建設し、中央に広場を設けた環状集落などを営んだ。食料は狩猟や漁労に加え、ドングリやクルミなどの木の実や植物の根を採集することが生活の基盤となっていた。

定住化が進むと、ゴミや食料の残り滓を捨てる貝塚が形成されるようになった。アメリカ人のエドワード・モースによって発掘された大森貝塚に代表されるように、貝塚からは当時の人々の食生活や生活様式を復元するための豊富な史料が出土している。さらに近年の研究や青森県の三内丸山遺跡の発掘成果から、縄文人がクリやマメ類などを意図的に管理・栽培する「半栽培」を行っていたことが明らかになっており、単なる狩猟採集生活の枠を超えた高度な社会を築いていたことがわかっている。

縄文土器の発明と広域ネットワーク

定住生活を可能にしたもう一つの重要要素が、縄文土器の発明である。土器を用いて煮炊きを行うことで、それまで生食や焼くだけでは食べられなかった植物の灰汁抜きが可能となり、利用できる食料資源が飛躍的に拡大した。縄文土器は厚手で黒褐色をしており、表面に撚り糸(縄)を転がしてつけた文様を持つものが多い。草創期・早期・前期・中期・後期・晩期の6期に区分され、とくに中期に東日本で作られた新潟県の火焔型土器などにみられるように、実用性を超えたダイナミックな装飾が施されている点が特徴である。

また、縄文社会は孤立していたわけではなく、列島規模の広域な交易ネットワークが存在していた。矢尻などの石器の材料となる長野県和田峠などの黒曜石や、装身具として珍重された新潟県糸魚川産の硬玉(ヒスイ)などは、産地から数百キロも離れた遺跡から発見されており、集落間で活発な物資の交換が行われていたことを示している。

精神世界と社会構造

縄文時代の人々は、自然界のあらゆる事象に霊威や精霊が存在すると信じるアニミズムの観念を持っていたと考えられている。女性の身体的特徴を誇張し、安産や豊穣を祈願したとされる土偶や、男性原理を象徴する石棒などの祭祀遺物は、当時の豊かな精神世界を物語っている。

埋葬方法においては、死者の四肢を折り曲げて土坑に埋める屈葬が広く行われた。これは死者の霊が彷徨い出るのを防ぐため、あるいは母親の胎内の姿勢を模して再生を願ったためと解釈されている。社会構造の面では、共同体における貧富の差や身分の階層化は明確ではなく、基本的には平等な社会であったと推測されているが、成人への通過儀礼としての抜歯などの風習を通じ、集団内の秩序や役割分担が維持されていた。

世界史的意義と時代の終焉

世界史の時代区分において、土器の使用や磨製石器の普及という点から、縄文時代は新石器時代に分類される。しかし、世界史における新石器革命が農耕・牧畜の開始と直結しているのに対し、縄文文化は本格的な農耕や牧畜を伴わず、狩猟・採集・漁労を主基盤としながらも極めて長期間にわたって安定した定住社会を維持した点で、世界的に見ても特異な歴史的意義を持っている。

約1万年続いた縄文時代であるが、晩期になると気候の寒冷化に伴って食料資源が減少し、社会に変化が生じ始めた。そして紀元前4世紀頃(近年の年代測定ではさらに遡る説もある)、朝鮮半島から北部九州へ本格的な水稲農耕と金属器が伝来したことで、社会に富の蓄積と階級の分化がもたらされ、日本列島は次第に弥生時代へと移行していくこととなった。

縄文時代の歴史 (講談社現代新書 2510)

一万年以上続いた狩猟採集社会の多様な実態と、現代にも通じる豊かな精神性を考古学から紐解く決定版。

縄文の思考 (ちくま新書 713)

現代人が忘れかけた自然との共生や独特の死生観を掘り起こし、縄文人の深遠な世界観に迫る思索の書。

日本史一問一答(ランダム)

Q. 旧石器時代の日本列島(特に東日本)を広く覆っていた、寒冷な気候に適応したマツなどの森林を何というか?
Q. 律令国家の税制の基本となる、収穫した稲を納める税、都での労働の代わりに布を納める税、地方の特産物を納める税をまとめて何というか?
Q. 倭の五王のうち、允恭(いんぎょう)天皇に比定される3番目の王は誰か?
A.