本百姓(高持百姓)

検地帳に登録され、田畑を持ち、年貢などの負担義務と村の運営に参加する権利を持つ農民を何と呼ぶか。
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★★★

本百姓(高持百姓) (ほんびゃくしょう(たかもちびゃくしょう)

1603年〜1867年

【概説】
江戸時代において、検地帳に名請人として登録され、田畑(石高)および家屋敷を所持した農民。年貢などの諸役を負担する義務を負う一方で、村落共同体の正規の構成員として村の自治運営に参加する権利を有し、幕藩体制の経済的基盤を支えた。

太閤検地と本百姓体制の成立

本百姓の起源は、豊臣秀吉が行った太閤検地に遡る。太閤検地によって「一地一作人の原則」が確立され、実際の耕作者が検地帳に名請人(なうけにん)として登録された。これにより、農民は領主から土地の所持と耕作権を公的に保障されると同時に、年貢を納入する直接的な義務を負うこととなった。

江戸幕府や諸藩もこの制度を継承し、石高制に基づく支配体制を構築した。幕藩体制下の農村においては、所持する田畑に石高が設定されている農民を本百姓(または高持百姓)と呼び、彼らを中心に村落が編成されていったのである。領主にとって本百姓は年貢の確実な負担者であり、彼らの経営を維持させることが支配の生命線であった。

幕藩体制を支える重い負担

本百姓は、領主に対して様々な重い負担を負っていた。最も主要なものが、田畑の収穫物に対して課せられる本途物成(ほんとものなり、年貢)である。さらに、山林や河川からの収益や副業に課せられる小物成(こものなり)、村高に応じて課せられる高掛物(たかがかりもの)、河川の土木工事などの肉体労働を提供する国役(くにやく)、街道の宿場に人馬を提供する伝馬役(てんまやく)など、多岐にわたる税や夫役(ぶやく)が課せられた。

これらの負担は、個々の農民に直接課されるのではなく、村を一つの単位として請け負わせる村請制(むらうけせい)がとられていた。そのため、本百姓たちは五人組などの連帯責任の仕組みを通じて、年貢の完納や治安維持に共同で当たった。幕府は本百姓の没落を防ぎ、確実に年貢を徴収するため、田畑永代売買の禁令(1643年)や分地制限令(1673年)を発布し、彼らの土地を手放させないような保護と統制を行った。

村落共同体における特権と地位

重い義務を負う反面、本百姓は村落共同体(村方)において様々な特権と優越的な地位を持っていた。彼らは村の正規の構成員として認められており、村の最高意思決定機関である寄合(よりあい)に参加して発言する権利を有していた。また、名主(庄屋)、組頭、百姓代といった村方三役などの村役人に就任する資格を持っていたのも、原則として本百姓のみであった。

経済的にも重要な特権を有していた。農業を営む上で不可欠な肥料(刈敷や草木灰)や薪炭材を得るための入会地(いりあいち、山林や原野)の利用権は、本百姓の特権として強く主張された。このように、田畑を持たない水呑百姓(みずのみびゃくしょう)や、有力な百姓に隷属する名子(なご)・被官(ひかん)といった下層農民に対し、本百姓は明確に区別された自立的な身分であった。

貨幣経済の浸透と階層分化

江戸時代中期以降、商品作物(綿花、菜種、桑など)の栽培が進展し、農村に貨幣経済が深く浸透し始めると、本百姓の経営形態に大きな変化が生じた。農業技術の進歩や商業的農業の展開により富を蓄積する者が現れる一方で、貨幣経済の波に乗れず、借金のカタとして田畑を質入れし、土地を失う者も続出した。

その結果、土地を集積して地主となる豪農(村役人層に多い)と、土地を失い小作人化したり水呑百姓へと没落したりする貧農へと、農村内部での階層分化が進行した。本百姓の体制が動揺し、村請制の維持が困難になると、幕府や諸藩は農村復興政策(寛政の改革、天保の改革など)を展開して本百姓体制の再建を図った。しかし、時代の大きな潮流を止めることはできず、この農村社会の変容は、やがて幕藩体制の崩壊と近代的な地租改正を通じた地主制の確立へと繋がっていくのである。

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最終更新:2026年6月17日 @ 23:49

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