福井洞穴

重要度
★★

【参考リンク】
福井洞窟(Wikipedia)

福井洞穴 (ふくいどうけつ)

紀元前17000年頃〜紀元前10000年頃

【概説】
長崎県佐世保市に位置する、旧石器時代終末期から縄文時代草創期にかけての洞穴遺跡。日本最古級の土器である隆起線文土器が細石器と共伴して出土し、旧石器文化から縄文文化への移行過程を連続的に示す遺跡として極めて高い学術的価値を持つ。

層位学的調査が明らかにした「技術の変遷」

福井洞穴は、標高約80メートルの砂岩の岩陰に形成された遺跡である。1960年代から開始された考古学者の芹沢長介らによる発掘調査により、厚さ約6メートルに及ぶ堆積層から、第1層から第15層にわたる精密な地層の積み重なり(層位)が確認された。

この遺跡の最大の功績は、地層累重の法則に基づき、道具の製作技術がどのように変化していったかを科学的に実証した点にある。下層からは旧石器時代の特徴である石刃や細石器(マイクロリス)が、中層(第3層)からは細石器とともに最初期の土器である隆起線文(りゅうきせんもん)土器が出土した。さらに上層からは縄文時代を特徴づける爪形文土器や押型文土器へと移行していくプロセスが確認され、無土器の時代から土器を使用する時代への過渡期が視覚的に明らかとなった。

世界最古級の土器出現と環境の変化

福井洞穴で発見された隆起線文土器は、放射性炭素年代測定により、今から約1万2000年以上前(現在では約1万6000年前まで遡るとされる)に位置づけられ、当時としては世界最古級の土器群の一つとして大きな注目を集めた。

この時期は、地球規模で氷河期(更新世)が終わりを告げ、温暖な後氷期(完新世)へと移行する劇的な環境変化の時代であった。気候の温暖化に伴い、針葉樹林から落葉広葉樹林へと植生が変化し、ドングリやトチなどの堅果類(木の実)が豊富に実るようになった。福井洞穴における土器の出現は、これら植物性食料を効率的に「煮る」ための道具として、人類が新たな環境に適応していったプロセスを雄弁に物語っている。

旧石器から縄文への「ミッシングリンク」の解明

戦後の日本考古学界においては、土器を持たない「無土器文化(旧石器文化)」と、土器を特徴とする「縄文文化」との間に大きな文化の断絶があるかどうかが議論の的となっていた。福井洞穴における細石器(旧石器の極限化された技術)と隆起線文土器(最初期の土器)の同一層からの出土(共伴)は、両文化が断絶されたものではなく、連続的に発展したものであることを証明する決定打となった。

このように、福井洞穴は日本の先史時代における文化編年の基準(ものさし)を提供した記念碑的な遺跡であり、その重要性から1978年に国の史跡に指定されている。

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日本史一問一答(ランダム)

Q. 縄文時代の獲得経済のうち、骨角器の釣り針や銛、網などを用いて魚介類を捕る活動を何というか?
Q. 古代の日本で行われた、鹿の骨を焼いてひび割れの具合を読み取り、吉凶を判断する占いの方法を何というか?
Q. 縄文時代の6区分のうち最後の時期で、亀ヶ岡文化が栄え、終わり頃には九州北部に水稲耕作が伝わった時期を何というか?