下学集 (かがくしゅう)
1444年
【概説】
室町時代中期に編纂された、中世を代表する部門分類体の国語辞典。日常生活で用いられる平易な漢語を中心に収録し、それぞれに音訓や意味の注記を施した実用書である。
書名の由来と室町中期の社会的背景
『下学集』は、室町中期の1444(文安元)年に成立した。編者は未詳であるが、禅僧などの知識層が関与したと推測されている。書名は『論語』憲問篇の「下学して上達す(身近な日常の事柄を学び、やがて高遠な真理に達する)」という一節に由来する。この書名が示す通り、本書は貴族や大寺院のための学術書ではなく、中世後半において新たに社会の主役となりつつあった武士や庶民(町衆など)に向けた、きわめて実用的な入門書・教育書として作られた点に時代的な特徴がある。
分類体の構成と国語史における意義
本書は収録された単語を「天地」「神祇」「人倫」「時節」「山川」など、18の部門(門)に分類して配列する「分類体」の構成をとっている。約3000語におよぶ日常語・漢語が収められており、各語には発音や和訓(意味)が付けられている。これは当時の話し言葉や言葉の使われ方を現代に伝える貴重な国語史史料である。また、本書の構成や編纂方針は、室町後期から江戸時代にかけて庶民の間で爆発的に普及することになる国語辞書『節用集』の先駆となり、日本の辞書文化の発展に大きな影響を与えた。