隠岐

承久の乱で敗北した首謀者である後鳥羽上皇が、幕府によって島流しにされた流刑地はどこか?
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隠岐

【概説】
島根半島の北の日本海に浮かぶ島嶼群であり、律令制においては山陰道に属する隠岐国(おきのくに)とされた地。承久の乱に敗れた後鳥羽上皇や、鎌倉時代末期に倒幕を企てた後醍醐天皇が配流されたことで知られる。日本の政治史の大きな転換期において、敗れた最高権力者が流される特異な歴史の舞台となった。

古代・中世における「遠流の地」としての位置づけ

隠岐は島根半島の北方約50キロメートルの日本海に位置し、本土から隔絶された離島という地理的条件から、古代より罪人を流す配流地として利用されてきた。律令の刑罰規定である五刑(苔・杖・徒・流・死)のうち、死刑に次ぐ重刑である「流(る)」の中で最も重い遠流(おんる)の地として、伊豆や佐渡とともに定められていた。

しかし、隠岐が日本史において特別な意味を持つのは、単なる流刑地であったからではない。古代から中世にかけての歴史の大きな転換点において、朝廷の最高権力者である天皇や上皇がこの地に流されたことで、日本政治史の重要な舞台となったからである。また、遣新羅使の寄港地や日本海交易の要衝としても機能し、単なる孤島ではなく外の世界と繋がる結節点でもあった。

承久の乱と後鳥羽上皇の配流

隠岐が歴史の表舞台に大きく登場するのは、鎌倉時代の1221年(承久3年)に起きた承久の乱である。鎌倉幕府の執権・北条義時に対して討幕の兵を挙げた後鳥羽上皇は、幕府軍の圧倒的な兵力の前に敗北を喫した。乱の後処理として、幕府は朝廷の最高権力者である後鳥羽上皇を隠岐へと配流する決定を下した。

天皇や上皇といった絶対的な権威を持つ存在が、武士の裁きによって流罪となるのは日本史上かつてない出来事であり、朝廷に対する幕府の絶対的な優位を決定づける象徴的な事件であった。後鳥羽上皇は隠岐の海士(あま・現在の中ノ島)に配所を定められ、その後京都へ帰還することなく、1239年(延応元年)にこの地で崩御した。上皇は配流中も和歌を詠み続け、『遠島百首』などを遺しており、都の高度な貴族文化が隠岐にもたらされる契機ともなった。

後醍醐天皇の配流と劇的な脱出

後鳥羽上皇の配流から約110年後の1332年(元弘2年/正慶元年)、再び隠岐に最高権力者が流されることとなる。鎌倉幕府の打倒を企てて敗れた後醍醐天皇である(元弘の乱)。奇しくも、自らの先祖である後鳥羽上皇と同じ運命を辿り、同じ地へ配流されたのである。

しかし、後醍醐天皇の隠岐配流は、後鳥羽上皇の時とは異なる展開を見せた。天皇が配流されている間も、楠木正成護良親王らが畿内周辺で反幕府の戦いを継続しており、全国的な倒幕の機運は高まりを見せていた。翌1333年(元弘3年/正慶2年)、後醍醐天皇は隠岐を脱出することに成功し、伯耆国の名和長年を頼って船上山で倒幕の兵を挙げた。これが決定打となり、足利尊氏や新田義貞の挙兵を誘発し、鎌倉幕府はついに滅亡へと追い込まれた。隠岐は、後醍醐天皇の不屈の闘志を育み、建武の新政へとつながる日本史の大きな逆転劇の舞台となったのである。

隠岐の歴史的意義と文化的遺産

このように隠岐は、後鳥羽上皇と後醍醐天皇という二人の帝が配流された「天皇の島」としての特異な歴史を持つ。都から遠く離れた辺境でありながら、日本の歴史を左右する最高権力者が長期にわたって滞在したことで、中央の高度な文化や信仰が直接もたらされることとなった。

現在でも隠岐には、後鳥羽上皇を祀る隠岐神社や、後醍醐天皇の行在所(あんざいしょ)と伝わる黒木御所跡など、彼らの足跡を伝える史跡が数多く残されている。また、配流された貴族たちがもたらした影響は島民の風習や芸能にも色濃く残っており、独自の歴史的背景から生まれた豊かな文化遺産を現代に伝えている。

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最終更新:2026年6月17日 @ 23:49

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