太政官符 (だいじょうかんふ)
701年〜1885年
【概説】
律令制下の最高官庁である太政官から、諸国や諸官庁へ下された正式な公文書。平安時代、この文書によって不輸の権(免税特権)を公認された荘園は「官省符荘」と呼ばれ、強力な特権を維持した。
律令制における公式な命令伝達文書
太政官符は、律令制における最上級の公文書体系である「公式令(くしきりょう)」に基づき、最高政務機関である太政官から諸国や諸官庁に対して発給された。天皇の命令(勅旨)を受け、太政官の議政官(大臣・大納言ら)の署名を経て下達されるため、極めて高い権威を持っていた。のちに実務の簡素化に伴って「宣旨(せんじ)」などのより迅速な文書形態が多用されるようになるが、国家的・公式な決定を下す際の正式な公文書としての地位は保たれ続けた。
荘園の特権化と「官省符荘」の成立
平安時代中期以降、中央貴族や大寺社などの荘園領主は、自己の所有する荘園の税負担を免除される「不輸(ふゆ)の権」の獲得を目指した。この免税特権を太政官符(および実務機関である民部省が発給する民部省符)によって国家公認された荘園を「官省符荘(かんしょうふそう)」と呼ぶ。国司の許可によって一時的に免税された「国免荘(こくめんそう)」とは異なり、国司の交代によっても特権が脅かされない強固な法的地位を誇り、中世荘園制の基盤となった。