民部省符 (みんぶしょうふ)
平安時代
【概説】
日本の律令制における民部省から、諸国などの下部機関に対して発給された正式な公文書。平安時代中期以降、太政官符と並んで荘園の免税特権(不輸の権)を法的に証明する極めて重要な根拠となった。
民部省の機能と公文書としての「符」
律令制における二官八省のうち、民部省は民政や戸籍、租税・財政などを管轄する中心的な官司であった。この民部省から、地方の国司(国衙)などの下部機関に対して下される命令文書が「民部省符」である。
律令国家における文書伝達において、上級官司から下級官司へ命令を下す際に用いられた様式が「符」であり、民部省符は国家の財政決定を地方へ伝達する公式な命令書としての重みを持っていた。
不輸の権の保証と「官省符荘」
平安時代中期、貴族や大寺社による荘園開発が進むと、政府に対して税の免除(不輸の権)を申請する動きが活発化した。この免税手続きにおいて、最高政務機関である太政官が発給した「太政官符」と、実務担当官司である民部省が発給した「民部省符」の二つの公文書が、最も正式な免税の証明書(符証)とされた。
これら二つの符によって免税特権を認められた荘園は、官省符荘(かんしょうふしょう)と呼ばれ、国衙による課税や介入を防ぐ強力な法的地位を獲得した。民部省符は、単なる行政文書の枠を超え、中世荘園制の確立と展開において決定的な役割を果たすこととなった。