浜北人

重要度
★★

【参考リンク】
浜北人(Wikipedia)

浜北人 (はまきたじん)

約1万8000年前

【概説】
静岡県浜松市(旧浜北市)の根堅(ねがた)洞窟で発見された更新世後期(旧石器時代)の化石人骨。火山灰土壌の影響で人骨の保存が困難な本州において、科学的な分析によって更新世のものと実証された唯一の確実な化石人骨。

根堅洞窟での発見と出土人骨の構成

浜北人は、1960年から1962年にかけて、静岡県浜松市浜名区(旧浜北市)に位置する根堅洞窟(石灰岩採掘場)から発見された。この遺跡からは、地層の「上層」と「下層」の双方から人骨が出土している。当初はそれぞれの時代比定に議論があったが、その後の放射性炭素年代測定やフッ素分析などの科学的な検証により、下層から発見された頭頂骨や鎖骨、上腕骨などの破片が約1万8000年前(更新世後期・旧石器時代)のものであることが実証された。なお、上層から出土した人骨(浜北人上層骨)は約1万4000年前のものとされ、こちらは縄文時代草創期に属することが明らかになっている。

なぜ本州における「唯一の確実な更新世人骨」なのか

日本列島、特に本州地域は火山灰に由来する酸性土壌(赤土の関東ローム層など)が広く分布しているため、土中に埋もれた人骨のカルシウム分が分解されやすく、化石人骨として後世に残ることが極めて稀である。かつては栃木県の葛生(くずう)人や、静岡県の三ヶ日(みっかび)人なども更新世(旧石器時代)の人骨と考えられていたが、近年の直接的な年代測定技術(加速器質量分析法:AMS法など)の進歩に伴い、その多くが縄文時代以降のものであることが判明し、旧石器時代の人骨としての位置づけは否定または保留されるに至った。その結果、現在において科学的に更新世の存在が担保されている本州の化石人骨は、この浜北人が唯一無二の存在となっている。

沖縄の化石人骨群との比較と日本人のルーツ

本州での発見がきわめて限定的であるのに対し、沖縄県(琉球列島)では港川人(約2万2000年前)や山下町第一洞人(約3万2000年前)、さらに白保竿根田原(しらほさおねたばる)洞穴遺跡から出土した人骨など、全身骨格に近い良好な保存状態の更新世人骨が多数発見されている。これは、沖縄地方がサンゴ礁に由来する石灰岩地帯であり、土壌が骨の保存に適した弱アルカリ性であるためである。このような保存環境の地域差がある中で、本州で辛うじて発見された浜北人は、旧石器時代に日本列島(本土)に居住していた「更新世人類」の実像を伝える貴重な物証であり、縄文人へとつながる日本人の直接的祖先、あるいは大陸からの渡来ルートを解明する上で極めて重要な学術的価値を有している。

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