四季山水図巻(山水長巻) (しきさんすいずかん(さんすいちょうかん)
【概説】
室町時代後期(東山文化期)に画僧・雪舟によって描かれた、日本を代表する水墨画の絵巻物。全長約16メートルに及ぶ画巻に、春から冬へと移り変わる四季の山水風景が、明代絵画の技法と日本独自の感性を融合させた力強い筆致で描かれている。雪舟の最高傑作と評され、現在は国宝に指定されている。
画僧・雪舟の画業の集大成と大内氏の庇護
室町時代中期、日本の画壇の中心であった京都は応仁の乱(1467〜1477年)の勃発によって荒廃した。これにより、多くの文化人が地方の有力守護大名のもとへ下向したが、画僧・雪舟もその一人であった。雪舟は周防国(山口県)の守護大名である大内氏を頼って山口に身を寄せ、大内氏の強力な庇護のもとで独自の画風を確立していった。
大内氏が主導する遣明船(日明貿易)に同乗して明に渡った雪舟は、中国本場の宮廷絵画や浙派(せっぱ)の画風を直に学び、帰国後に日本の自然風土に適した水墨画の表現を模索した。本作『四季山水図巻』(通称:山水長巻)は、雪舟が67歳に達した1486年(文明18年)に、大内氏(一説には大内政弘)のために描いたとされる。これまでの中国絵画の純粋な模倣から脱却し、日本の自然観を水墨画へと見事に昇華させた、雪舟の画業の到達点を示す記念碑的作品である。
パノラマ的に展開する四季の推移と独創的技法
本作の最大の特徴は、縦約40センチメートル、全長約15.9メートルという壮大な画面に、春・夏・秋・冬の景観が切れ目なく連続して描かれている点にある。鑑賞者が右から左へと巻物を紐解くにつれ、時の流れとともに季節が移り変わる様子が、まるで一本の映画のようにパノラマ的に展開する構成となっている。
雪舟は、明代の絵画から学んだ斧劈皴(ふへきしゅん:斧で割ったような鋭い岩肌の表現)などの力強く骨太な墨線を用いつつも、湿潤な空気感や樹木の描写において、日本の気候風土に適した抒情的な情緒を表現した。この硬質な造形力と日本的な詩情の融合こそが、室町絵画における大きな革新であり、後世の狩野派をはじめとする日本の近世画壇に決定的な影響を与えることとなった。現在は山口県防府市の毛利博物館に所蔵されている。