雑誌『青鞜』

平塚らいてうらが1911年に創刊した、女性の自我覚醒と文学活動の舞台となった女性向けの文芸雑誌は何か?
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★★★

【参考リンク】
青鞜(Wikipedia)

雑誌『青鞜』 (せいとう)

1911年〜1916年

【概説】
1911年(明治44年)に平塚らいてうら青鞜社によって創刊された、日本初の女性による女性のための文芸雑誌。当初は女性の文学的才能の育成と発表の場として出発したが、次第に封建的な道徳を批判し、女性の自由と権利を主張する婦人解放運動の中心的な舞台へと発展した。

創刊の背景と「青鞜社」の結成

明治時代後期、日本の国家体制が確立される中で、女性に対しては「良妻賢母」を理想とする教育やイデオロギーが強く推し進められていた。女性は家庭に入り、国家に有為な人材を育成することが求められ、公的な場や社会的な自己実現から遠ざけられていたのである。こうした閉塞的な状況下において、1911年(明治44年)9月、平塚らいてうを中心に、保持研子、中野初子、木内キヤウ、物集和子らが発起人となり、女性だけの文学集団「青鞜社」が結成された。

「青鞜」という名称は、18世紀イギリスにおける教養ある女性たちの集まり「ブルー・ストッキング(青い靴下)」に由来する。彼女たちは、男性中心の文壇に依存することなく、女性自身の力で隠された才能を引き出し、自由に自己表現を行う場として雑誌『青鞜』を創刊したのである。創刊号には、与謝野晶子が「山の動く日きたる」という詩を寄せ、新しい女性の時代の幕開けを祝福した。

「元始、女性は太陽であった」――自我の覚醒と「新しい女」

『青鞜』創刊号の巻頭を飾ったのが、平塚らいてうによる有名な宣言「元始、女性は太陽であった」である。らいてうは、かつての女性が真の自己を輝かせる存在(太陽)であったのに対し、現在は他者に依存し、他者の光によって輝く「月」のような存在に零落してしまったと嘆き、奪われた自我と光を取り戻そうと力強く呼びかけた。

この宣言は、単なる文学的表現にとどまらず、因襲的な家族制度や道徳の下で抑圧されていた当時の女性たちに強烈な衝撃を与えた。『青鞜』に集う女性たちは、自らの意志で生き方を模索し、社会の常識に縛られない自由な恋愛や行動を実践した。世間は彼女たちを「新しい女」と呼び、当初は好奇の目で、やがて強い非難とバッシングの対象として扱っていくことになる。

文芸雑誌から女性問題の論争の場へ

創刊当初の『青鞜』は、あくまで女性の文学的覚醒を目指す文芸雑誌としての色彩が強かった。しかし、読者や同人からの投書が相次ぎ、彼女たちが直面する現実の苦悩が紙面に反映されるようになると、次第にその性格を変えていく。親の決めた結婚への反発、貞操観念の偽善性、堕胎問題、廃娼運動など、タブー視されていた社会問題や女性問題が正面から議論されるようになったのである。

特に、明治民法の下で絶対視されていた「家」制度や家父長制に対する批判は、国家の根幹を揺るがす危険な思想とみなされた。『青鞜』は、個人の尊厳と自我の確立を求める大正デモクラシーの思潮を先取りし、それをジェンダーの視点から実践する極めて先鋭的なメディアへと変容していったのである。

社会的弾圧と伊藤野枝への編集権移譲

『青鞜』が婦人解放の論陣を張るようになると、良妻賢母主義を国是とする政府からの風当たりは急速に強まった。内容が「風俗壊乱」であるとして、幾度も発禁処分を受けるなど、激しい言論弾圧に晒されたのである。また、資金繰りの悪化や、世間からの激しいバッシングにより、初期の同人たちが次々と離脱していく事態にも見舞われた。

1915年(大正4年)、疲労困憊した平塚らいてうは、編集権を後進の伊藤野枝に譲った。野枝の下で『青鞜』はさらにラディカルな色彩を強め、アナーキズム(無政府主義)的な傾向を帯びていった。しかし、経済的な困窮や同人たちの生活の変化、さらなる弾圧などにより、雑誌の維持は困難を極め、1916年(大正5年)2月発行の第6巻第2号をもって事実上の休刊に追い込まれた。

歴史的意義と後世への影響

わずか5年足らずの活動期間であったが、『青鞜』が日本近現代史に与えた影響は計り知れない。それは日本におけるフェミニズム(女性解放運動)の原点であり、女性が自らの声で権利と自由を主張した記念碑的な出来事であった。

『青鞜』によってまかれた自我覚醒の種は決して絶えることはなく、後に平塚らいてうや市川房枝らが1920年(大正9年)に結成する新婦人協会を通じた女性参政権獲得運動などへ、具体的な政治的・社会的運動として受け継がれていくことになる。『青鞜』は、近代日本において女性が「個人」としての尊厳を獲得するための、長く険しい闘いの出発点として重要な歴史的意義を持っている。

青鞜の時代: 平塚らいてうと新しい女たち (岩波新書 新赤版 15)

近代日本の女性解放運動の灯火を掲げ、自由と平等を求めて奔走した先駆者たちの情熱と苦闘を刻む一冊。

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最終更新:2026年6月17日 @ 23:49

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