マンモス (更新世)
【概説】
氷期の寒冷な気候に適応し、全身を長い毛で覆われた大型の哺乳類。日本列島においては、主に大陸と陸続きであった北海道地方から化石が発見されている。旧石器時代の人々の主要な狩猟対象であり、彼らの移動や石器文化の発達に深い関わりを持つ。
シベリアからの南下と「ブラキストン線」の起源
更新世(旧石器時代)の氷期、地球規模の寒冷化によって海水面が低下したことで、日本列島はユーラシア大陸と陸続きになった。このとき、シベリアや中国東北部から寒冷地を好む北方系動物であるマンモス(ケナガマンモス)が、地続きとなったサハリン(樺太)を経由して北海道地方へと南下した。北海道地方では、幕別町忠類(旧忠類村)などでマンモスの臼歯などの化石が発見されており、当時の寒冷な気候と平原環境を証明している。
一方で、本州以南からはマンモスの化石はほぼ発見されず、代わりに温帯に適応した南方系のナウマンゾウやオオツノジカの化石が数多く発見されている。この動物相の違いは、津軽海峡が水深の深さゆえに氷期でも陸地化しきれず、マンモスの南下を阻んだことを示している。これは現在の津軽海峡に設定されている動物地理学上の境界線「ブラキストン線」の歴史的起源でもある。
旧石器人の移動とマンモス狩猟の技術
マンモスをはじめとする大型動物の動向は、日本列島に居住した旧石器時代の人々の生活様式を決定づけた。植物性食料が極めて乏しかった氷期において、人類はこれら大型哺乳類を追って大陸から日本列島へと移り住んだと考えられている。そのため、旧石器時代の人々は定住せず、獲物を追って移動を繰り返す狩猟採集生活を営んでいた。
彼らが用いた道具も、大型獣の狩猟に適した形で発達した。獲物を仕留めるための槍先として用いられた尖頭器(せんとうき)や、後期旧石器時代の終わり頃にシベリアから北海道経由で伝わったとされる、骨角器に埋め込んで用いる細石刃(さいせきじん)などの高度な石器技術は、マンモスなどの巨大な獣を効率よく仕留めるための、人類の知恵と生存戦略の結晶であった。