奈良時代

710年に元明天皇が平城京に都を移してから、784年に桓武天皇が長岡京へ遷都するまでの時代区分は何か?
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奈良時代

710年〜784年

【概説】
710年の平城京遷都から784年の長岡京遷都までの約74年間、平城京を中心に律令国家が本格的に展開した日本の歴史区分の一つ。天皇を頂点とする中央集権的な統治体制が完成を見た一方で、貴族間の政争や社会不安が絶えない激動の時代でもあった。遣唐使などを通じて大陸の文化が流入し、国際色豊かで仏教色の強い天平文化が花開いたことでも知られる。

律令国家の完成と平城京の繁栄

8世紀初頭、大宝律令(701年)の制定によって法制的な基礎を固めた日本は、唐の都である長安を模した大規模な新都、平城京を造営し、710年に元明天皇が藤原京から遷都を行った。これが奈良時代の幕開けである。平城京は碁盤の目状に区画された条坊制を持ち、中央には天皇の居所であり政治の中心である平城宮が置かれた。

この時代、政府は中央集権体制を全国に浸透させるため、官道(駅馬・伝馬の制)を整備し、国司を派遣して地方支配を強化した。また、和同開珎(708年)に代表される銭貨の流通を促すなど、貨幣経済の導入も試みられた。こうして、戸籍・計帳に基づいて人民を把握し、租・庸・調などの税を徴収する律令国家の枠組みが実質的に機能し始めたのである。

激化する政争と藤原氏の台頭

律令体制が確立する一方で、中央の政治は権力闘争に明け暮れた。政治の主導権は、飛鳥時代から続く皇親(皇族)勢力と、新興の貴族層である藤原氏との間で激しく争われた。729年には、皇親政治を主導していた長屋王が藤原四兄弟(武智麻呂・房前・宇合・麻呂)の陰謀によって自害に追い込まれる(長屋王の変)。これにより藤原氏が権力を掌握した。

しかし、737年に天然痘の大流行によって藤原四兄弟が相次いで病死すると、橘諸兄が政権を握り、唐から帰国した吉備真備や玄昉が重用された。これに反発した藤原広嗣が反乱を起こす(藤原広嗣の乱)など、政局は常に不安定であった。その後も藤原仲麻呂(恵美押勝)の乱(764年)や、僧侶の道鏡が天皇の位を狙ったとされる宇佐八幡宮神託事件(769年)など、皇位継承問題と絡み合った政変が繰り返された。

土地制度の変容:公地公民制の崩壊と荘園の発生

律令制の根幹をなす土地制度は「公地公民制」であり、人民には戸籍に基づいて口分田が与えられる班田収授法が実施されていた。しかし、奈良時代中期になると人口の増加によって口分田が不足し始めた。さらに、農民に対する庸・調・雑徭といった過酷な負担が行き詰まりを見せ、逃亡や浮浪によって税を逃れる者が続出した。

この事態を打開するため、政府は723年に三世一身法、続いて743年に墾田永年私財法を発布し、新たに開墾した土地の私有を認めた。これは国家が自ら公地公民の原則を放棄したことを意味しており、非常に重要な歴史的転換点である。結果として、財力のある貴族や大寺社が農民を使って大規模な開墾を行い、初期荘園(墾田地系荘園)が形成されていくこととなった。

鎮護国家の思想と天平文化の開花

奈良時代を象徴するもう一つの側面が、仏教を中心とした文化の発展である。当時の社会は、天然痘の大流行や相次ぐ飢饉、大地震、そして前述の政治的反乱によって深い不安に包まれていた。これに心を痛めた聖武天皇は、仏教の力によって国家の安泰を図る鎮護国家の思想に深く傾倒した。

聖武天皇は741年に国分寺建立の詔、743年に大仏造立の詔を発し、国家の総力を挙げて東大寺と巨大な盧舎那仏(奈良の大仏)を造営した。また、遣唐使を通じて唐や西域のペルシャなどからもたらされた品々は、正倉院に多数収蔵されている。このように、国際色豊かで仏教の威容を誇る貴族文化を天平文化と呼ぶ。同時に、『古事記』『日本書紀』『万葉集』『風土記』などが編纂され、国家としてのアイデンティティや歴史意識が明確に形作られた時代でもあった。

奈良時代の終焉と次代への遺産

時代が下ると、平城京における大寺社(南都六宗)の政治的影響力が強まり、国政の足かせとなるようになった。道鏡の事件はその最たる例である。天武天皇系から天智天皇系へと皇統が移り即位した光仁天皇、そしてその後を継いだ桓武天皇は、仏教勢力との結びつきが強い平城京からの脱却と、弛緩した律令体制の再建を決意した。

784年、桓武天皇は山背国の長岡京へ遷都を実行し、これにより奈良時代は終焉を迎えた。奈良時代はわずか70年余りの短い期間であったが、日本が「国家」としての体裁を東アジア世界に示し、独自の法制度、土地制度、文化の基盤を築き上げた極めて重要な時代であった。ここで生じた荘園の発生や政治構造の変化は、次なる平安時代へと引き継がれていくこととなる。

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最終更新:2026年6月17日 @ 23:49

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