夏木立

山田美妙が「〜である」調の言文一致体を試みて発表した代表的な短編小説集は何か?
カテゴリ:
重要度
★★

夏木立 (なつきだち)

1888年

【概説】
明治時代の小説家・山田美妙による代表的な短編集。口語に近い文章で小説を書く言文一致運動の先駆的作品であり、主に「である」調や「です・ます」調の文体を用いて書かれたことで知られる文学史上の重要作。

言文一致運動の展開と『夏木立』の誕生

明治維新以降、欧米の近代思想や文学が流入するなかで、従来の形式的な漢文調や候文(そうろうぶん)ではなく、日常の話し言葉に近い文章で文学を表現しようとする言文一致運動が起こった。坪内逍遥が『小説神髄』で写実主義を提唱したことを受け、二葉亭四迷が『浮雲』で「だ」調の言文一致体を試みるなど、1880年代後半は新たな文体の模索期にあたっていた。

こうした状況下で、尾崎紅葉らとともに文学結社「硯友社(けんゆうしゃ)」を結成していた山田美妙が、1888(明治21)年に刊行したのが短編集『夏木立』である。本作には、平将門の乱に取材した「武蔵野」などの歴史小説や、写実的な現代小説が収録されており、言文一致体を本格的に実践した作品として世に送り出された。

美妙の文体改革と同時代への影響

美妙は『夏木立』において、落語の口演筆記などに由来する「です・ます」調や、文末を「である」で結ぶ「である」調を大胆に採用した。二葉亭四迷の「だ」調が東京の下町言葉をベースにしていたのに対し、美妙の「である」調はより上品で理知的な響きを持ち、言文一致体を単なる俗語の記述ではなく、芸術的な鑑賞に堪えうる近代的な文体へと高める役割を果たした。

『夏木立』の成功は、同時代の文壇に大きな衝撃を与えた。特に美妙の流麗な口語体は若者たちに広く受け入れられ、のちに近代小説の主流となる自然主義文学の描写文体が形成されるうえで、重要な橋渡し役となった。また、文学界のみならず、明治政府が進める国語の標準化や国語教科書の編纂といった、近代国家における言語制度の確立にも間接的な影響を及ぼした。

明治文學全集 23 山田美妙・石橋忍月・高瀬文淵集

明治期に文壇を席巻した写実主義の旗手たちの傑作を網羅し、日本近代文学の黎明期を鮮明に映し出す貴重な集成。

詳説日本史図録

教科書『詳説日本史』の内容を、豊富な写真や図解、地図でビジュアル化した超定番の図録。文字だけでは理解しにくい歴史の流れや文化財のディテールが視覚的に頭に入る。

最終更新:2026年6月17日 @ 23:49

日本史一問一答(ランダム)

Q. 正倉院の宝庫などに用いられている、断面が三角形の木材を横に組み上げて壁とする建築様式を何というか?
Q. 足利尊氏・直義兄弟が、夢窓疎石の勧めで南北朝の動乱による戦死者の霊を弔うために、全国の国ごとに建てさせた寺院と塔をそれぞれ何というか?
Q. 2025年、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、大阪湾の人工島である夢洲で開催された国際的なイベントは何か?