ロンドン海軍軍縮条約

1930年に締結され、日本の補助艦総トン数を対米英比で6.97割とし、潜水艦については日米英で同等と定めた条約は何か?
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ロンドン海軍軍縮条約

1930年

【概説】
1930年(昭和5年)にイギリスのロンドンで開催された国際会議において締結された海軍の軍縮に関する条約。
ワシントン海軍軍縮条約で制限されなかった補助艦(巡洋艦、駆逐艦、潜水艦など)の保有量制限を主な目的とした。
日本の補助艦総トン数を米英の約7割(69.75%)とし、大型巡洋艦は6割に抑え込むことが定められたが、これが国内における統帥権干犯問題を引き起こす契機となった。

開催の背景とワシントン体制の継承

1921年から翌年にかけて結ばれたワシントン海軍軍縮条約では、戦艦や航空母艦といった主力艦の保有比率が定められたが、巡洋艦以下の補助艦については全体のトン数制限が設けられていなかった。そのため、各国は条約の制限外である補助艦の建造競争にしのぎを削ることとなり、再び軍拡の危機が高まっていた。

こうした状況を憂慮したイギリスの労働党内閣(マクドナルド首相)の提唱により、1930年にアメリカ、イギリス、日本、フランス、イタリアの5カ国が参加してロンドン海軍軍縮会議が開催された。当時の日本は、世界恐慌の波及(昭和恐慌)による深刻な経済不況下にあり、浜口雄幸内閣は財政立て直しのために軍事費の削減を強く企図していた。そのため、首席全権に若槻礼次郎、全権委員に財部彪海相らを派遣し、軍縮の実現に向けて積極的な姿勢で臨んだ。

条約の内容と日本の立場

会議では、主力艦の建造休止期間をさらに5年間延長することに加えて、焦点となっていた補助艦の保有制限が主な議題となった。日本側は海軍の強い要望として「対米英7割の補助艦総トン数」「大型巡洋艦の対米7割」「潜水艦の現状維持(約7万8000トン)」という「三大原則」を主張して交渉に臨んだ。

しかし、米英との激しい交渉の結果、日本は妥協を余儀なくされた。最終的な合意内容として、日本の補助艦総トン数は米英の約7割(正確には69.75%)を確保したものの、海軍が最も重視していた大型巡洋艦については対米6割に抑え込まれた。一方で、潜水艦については日米英が同等の5万2700トンとすることで決着した。フランスとイタリアは補助艦の制限割合に反発して部分的な参加に留まったため、実質的に米・英・日の3カ国間で補助艦制限が成立する形となった。

統帥権干犯問題の発生

この妥協的な条約案に対し、日本の国内では激しい反発が巻き起こった。海軍内部では、条約を容認する条約派(財部彪や岡田啓介ら)と、条約に強硬に反対する艦隊派(加藤寛治軍令部長や末次信正ら)との対立が表面化した。艦隊派は、国防に不可欠な兵力が確保できないとして条約の調印に絶対反対の立場をとった。

しかし、浜口雄幸内閣は文民統制(シビリアン・コントロール)と財政健全化を優先し、軍令部の反対を押し切って条約の調印・批准を断行した。これに対し、野党の立憲政友会(犬養毅、鳩山一郎ら)や右翼陣営、そして海軍内の強硬派は、兵力量の決定は天皇の統帥大権に属するものであり、軍令部の同意なしに政府が兵力量を決定したのは統帥権の干犯であると激しく政府を攻撃した。

政党政治の危機と軍部の台頭

統帥権干犯問題は、単なる憲法解釈の論争を超えて、政党政治そのものを揺るがす重大な政治問題へと発展した。政府への不満を募らせた右翼青年・佐郷屋留雄により、1930年11月に東京駅で浜口雄幸首相が狙撃されて重傷を負う事件が発生した。浜口首相はその後退陣し、翌年に命を落とすこととなる。

ロンドン海軍軍縮条約の締結は、短期的には協調外交の成果であり、国家財政の負担軽減に寄与した。しかし、これに伴う統帥権干犯問題の噴出は、政党内閣の権威を著しく失墜させ、軍部が政治に対して強い発言権を持つ決定的な転換点となった。その後、日本は国際的な協調路線から次第に離脱し、1936年にはワシントン・ロンドン両軍縮条約が失効を迎え、無制限の建艦競争時代へと突入していくのである。

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最終更新:2026年6月17日 @ 23:49

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