建武以来追加

鎌倉幕府の「式目追加」に対し、のちの室町幕府が建武式目のあとに発布した追加法令を総称して何というか?
カテゴリ:
重要度
★★

建武以来追加 (けんむいらいついか)

1336年〜

【概説】
室町幕府が基本方針である「建武式目」の制定以降、社会情勢の変化に対応して順次発布した追加法令の総称。鎌倉幕府が定めた「御成敗式目」の追加法令(式目追加)と区別してこのように呼ばれる。室町時代の裁判や行政の実務において、事実上の特別法・判例法として重要な役割を果たした法令群である。

御成敗式目と建武式目を補完する法体系

室町幕府の法秩序は、鎌倉幕府が制定した「御成敗式目(貞永式目)」を基本法としてそのまま継承した。これに対し、足利尊氏が1336年に定めた「建武式目」は、17条からなる抽象的な施政方針や道徳的指針に過ぎず、具体的な裁判基準や行政手続きを規定したものではなかった。そのため、幕府は現実の社会秩序の維持や具体的な裁判のために、必要に応じてその都度、単行の法令(追加法)を発布しなければならなかった。これが「追加」と呼ばれる法令群であり、鎌倉時代の追加法と明確に区別するために「建武以来追加」と総称されたのである。

室町社会の動乱と変容を反映した法令内容

建武以来追加に収録された法令の内容は、南北朝の動乱から室町中期にかけての激動する社会秩序を如実に反映している。具体的には、守護の権限拡大にともなう半済令(軍費調達のために荘園や公領の年貢の半分を武士に与える法令)や、土地の二重譲渡の禁止、土地争いにおいて実力行使に出ることを禁じる刈田狼藉(かりたろうぜき)の取り締まりなどが代表的である。また、室町中期以降に頻発した徳政一揆に対処するための徳政令や、債務・売買に関する規定も、追加法令として発布された。これらは中世社会における権利関係の流動化や武力の拡大に対処するための、幕府による現実的かつ臨機応変な法治の試みであった。

奉行衆による体系化と分国法への継承

発給された膨大な追加法令は、幕府の実務官僚である奉行衆(右筆など)の手によって分類・整理された。訴訟や裁判の迅速な処理を目的として、「土地訴訟(知行論)」「徳政関係」「刑事関係」などの部門ごとに編纂され、法典としての『建武以来追加』が形作られた。この実務的な法典編纂の技術や運用実績は、室町幕府の衰退期においても大きな意味を持ち、戦国大名がそれぞれの領国を支配するために制定した「分国法」の構造や内容に多大な影響を与えることとなった。

續法制史の硏究 第三編 中世 (岩波オンデマンドブックス)

中世社会の法構造を多角的な視点から解明し、日本法制史の空白を埋める緻密な論考が凝縮された学術的価値の極めて高い一冊。

日本法制史史料集

古代から近世に至るまで日本の法制度を規定した重要史料を厳選し、法思想や統治の変遷を読み解くための不可欠な歴史資料集。

最終更新:2026年6月17日 @ 23:49

日本史一問一答(ランダム)

Q. 駅制において一定の間隔で設置され、公用の役人のために馬や食料、宿泊施設を提供した場所を何というか?
Q. 幕末から明治にかけて活躍し、盗賊を主人公とする白浪物や文明開化を描く散切物を数多く執筆した歌舞伎の脚本家は誰か?
Q. 寒冷な氷期と氷期の間に挟まれた、気候が比較的温暖になり氷河が縮小した時期を何というか?